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2002年11月22日

『シャイン』

 かのスピルバーグをして「10年に1度の傑作。オスカー間違いなし!」とまで言わしめた感動の名作。実在する天才ピアニスト「デビット・ヘルフゴッド」の半生を描いた作品です。精神に異常をきたした彼が、いかにして輝きを取り戻すのか。観終わった後、爽やかな感動に包まれる素晴らしい作品です。

 幼少の頃から、厳しい父の指導のもとピアノに打ち込むデビット。前半部分は、父とデビットの確執を中心に展開していきます。過剰なまでに愛情を注ぐ父と、父の束縛からの解放をもとめるデビット。父の愛情はやがてデビットを追い詰め、それが後に大きな悲劇をもたらすこととなるのです。

 思うに、デビットにとってのピアノは愛情表現の手段なんですよね。虚弱で内向的、なんの取り柄もないデビットが、父の過剰な愛情と期待にこたえるには、ピアノしかなかったわけです。父への反発心から家出同然で英国に留学したデビットが、コンクール曲に父のこよなく愛した「ラフマニノフ」を選んだのはなぜか? そこにあるのは反発心でも怒りでもなかったと思うのです。父を喜ばせたい、父に認められたいと願う、純粋な気持ち。「いつかこの曲を弾きこなして、父さんを喜ばせてくれ・・」と自分を抱きしめた父への、最大にして最高の愛情表現だったんでしょうね。

 全身全霊を込めたこのラフマニノフの演奏シーンは圧巻。圧倒的な迫力で、観ているこっちの息がとまりそうになるほど。何度観ても鳥肌がたちます。

 この演奏のせいで精神に異常をきたしたと解釈する人は多いでしょう。しかし、本当の意味で彼を奈落の底に突き落としたのはやはり父なんですね。コンクールの優勝メダルを手に、彼の演奏に涙を流す父。デビットの愛情は痛いほど感じたに違いありません。しかし、帰国し電話をかけてきたデビットを、彼は許さなかった。すべてを注いだデビットのピアノを、愛情を、彼は拒絶したのです。デビットの味わった絶望と後悔ははかりしれません。監督のスコット・ヒックスは、この部分を一切映像にしなかった代わりに、晩年のデビットのコミカルなつぶやきの中に散りばめたのでした。

 後半は、精神に異常をきたしたデビットが再び人生を取り戻す晩年を描いています。ピアノによって愛情を失ったデビットが、ピアノによって、再び輝きを取り戻していく。リサイタルでスタンディング・オベーションを受けるラストシーンは素晴らしい! 思い出しただけでも涙が出てきそうです。

  *     *     *     *     *     *

 公開当時、私はたまたまオーストラリアにいたのですが、現地ではこの素晴らしいオーストラリア映画を何が何でもアカデミー賞に輝かせようと、メディアをあげての一大キャンペーンを展開しておりました。残念ながら作品賞・監督賞などは逃しましたが、迫真の演技をみせたジェフリー・ラッシュが見事主演男優賞を受賞。本当ならもう2、3個あげてもいいくらいの作品なんですけどね。

 ちなみに、このジェフリー・ラッシュ、その昔メル・ギブソンと部屋をシェアしていたことがあるそうです。売れない頃はお金がないから、二人で一緒に暮らしていたというわけ。俳優を志すもの同士、時にはワイン片手に将来について熱く語りあっていたのかもしれません。

 そして、輝ける第69回アカデミー授与式。壇上でジェフリー・ラッシュにオスカーを渡すその人こそ、誰あろう、第68回「ブレイブ・ハート」でアカデミー作品賞、監督賞を受賞したメル・ギブソン! 二人の売れない役者は、映画界の頂点で顔を合わせたのです。

 TVで一人中継を見ていた私・・・。グッとくるものがありましたね。

- Text by じょん -


シャイン
パイオニアLDC
ジェフリー・ラッシュ(俳優)ノア・テイラー(俳優)アーミン・ミューラー=スタール(俳優)スコット・ヒックス(監督)
発売日:1998-02-25
おすすめ度:4.5
おすすめ度4 シャイン
おすすめ度5 最高傑作です
おすすめ度5 幸せな気分になりたい人にはおすすめです!
おすすめ度5 最高です
おすすめ度5 ピアノってすごい!!

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